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父からのサプライズ!! [古ひつじの詩(川柳・狂歌・詩・散文など)]

後輩の方が送って下さった、
鶴工校歌のCDを父に聞かせていた

作詞 西条八十
作曲 山田栄一

海港横浜 波路の白帆
我等の行く手をことほぐ朝
いざ友 築かん 力を協せ
世界を導く 工業日本

号泣するかと思った父は、
頷きながら聞いていた

目を潤ませながら
天井を見つめていた

きっとあの頃の情景が
蘇っているに違いない

野球の練習に明け暮れる毎日
ともに机を並べた旧友たち 先生方
愛着のあった校舎
まだ10代だった頃の自分
学生服の匂い

疲れて帰って来ても
勉強机に向かった自分の部屋

元気で若かったころの家族

縁側から日が射して
若くして亡くなった母親の写真


父の目は、思い出を追っていた


私は、
廃用症候群が進んでいる父の足を
いつもの通り
マッサージしていた

右足も
少ししか動かない
でも
この右足の動きが無くなれば
父の身体の可動域がなくなってしまう

だから私は
一所懸命 父の足をこする

皮膚が剥離しやすくなっているから
細心の注意を払うのは忘れない


と、
父の全麻痺した左足が動いたような気がした

あぁ、
また眩暈がひどくなってる・・・

私の眩暈は、
動かないはずのものを動かす

冷蔵庫
階段

手すり
建物
景色

父が転院して落ち着いたから
ほっとして疲れが出始めたのかも・・・

一度しっかり
自分を休ませてやらなくちゃ・・・

いつから休んでないんだろう・・・

と思ったとたん
あらら…!!
やっぱり父の左足が動いた!

「おじぃちゃん!
左足が動いたよ!
今、確かに動いたよ!」

不思議そうな顔をしながら
父は頷いた

困惑した顔をしている

動かそうとして動かしたのではなかったのか???

痙攣のようなものなのか???

もう2年半以上も固まったままの右半身
ほんとうに動くものなの?


父の困惑した表情は、まだ続いていた

私は
父が思うようにコントロールできないのだと気がついた

動かそうと意図したとおりに
自分の足を動かすことはできなかったのだ

いや、でも、確かに・・・

確かに麻痺したままだった足が動いていた
リハビリもしていないのに動くなんて!!

しかも、ここ7か月ほどは
寝たきりのままだった

なのに動いたなんて!

私はいてもたってもいられずに
ナースのところに走って行った

そして、多少興奮気味に
当直のナースにこのことを伝えた

私の熱さに比べて
ナースの対応はあっさりしたものだったが
すぐに病室に来てくれた

そして彼女も確認したのだった


麻痺した足が動いたということが、
麻痺の改善に直結するわけではないだろうし
父や私に過度の期待を抱かせることは
控えておきたい配慮を踏まえての、
彼女の冷静な反応だったろう


でも、どうでもいい

麻痺して固まっているはずの
左足が動いたのは確かなんだから

過度の期待くらい
いくらでも背負ってあげる

ここ3年で
父は何度も
天国と地獄を行き来した

そのくらいではへこたれない

90才で
麻痺した足を動かした父の雄姿が
涙でうるんで見えなくなった

ほんと、えらいわ
えらいわよ、お父さん。






最後までお読み下さって、ありがとうございます♪ m(_ _)m







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