CHIKAGORO：SSブログ

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2015年07月22日｜ 2015年07月23日｜2015年07月24日ブログトップ

音声変換機を　脳卒中の後遺症の父に

以前にこのブログで紹介した、免疫学者の多田富雄さんの本『寡黙なる巨人』　に書いてあったのですが、多田富雄さんは脳卒中の後遺症で、声が出なくなられてから『音声変換機』を使っておられたそうです。

で、調べました！（笑）

私の父も、脳出血の後遺症で言葉を発することができません。咳をするときなどは声は出るのですが、声をだそうと思って出すことができません。
こちらから話し掛ける内容はよく分かっています。

今日も面会してきましたが、原子力発電所の話をしました。
父は、麻痺の残った右手で『OKマーク』を作ったり、手のひらを縦にひらひらさせて『NO』の意思表示をしますし、筆記で意思を伝えることもできます。
でも、元気なころの調子で、 続け字 で書いてしまうし、「ボクが」というのも「僕が」と わざわざ漢字で 書きます。
リハビリのためには 漢字を使うことも、筆書きで文字を書くことも大切でしょうが、施設のスタッフの人たちには、なかなか伝わりません。
一見、解読不可能な文字 に見えます。

根気強くたどっていくと分かることが多いのですが、ただでさえ忙しく動き回っておられる施設のスタッフの人たちに、毎回、父につきあってくれるようにお願いすることなど申し訳なくてできません。
私でさえ、ときに「カタカナで１文字ずつ書いてくれる？」　と言うことがあります。
父にとっては、思ってる内容の百分の一も伝わらず、哀しく思ったり、諦めたりすることが多いでしょう。
声を発することができないので、言葉にならぬ思いは飲み込むしかありません。

そんな状況ですので、多田富雄先生の本からヒントを頂いて『音声変換機』を調べてみると、大阪府大東市のレンタル会社を見つけました。

しかも、とても良心的で、１週間のお試しレンタルができるというのです

早速申し込み、デモ機が届くのを待ちかねて、施設にいる父のもとに持って行きました。

『音声変換機』とはどのようなものかというと、大きな電卓のような形をしていて、５０音のキィが並んでいます。指先で押すと、押した文字の音が出ます。「あ」と押したら「あ」、「い」と押したら「い」、という具合に声が出るのです。　
あ、り、が、と、う、と押してから『話すマーク』のボタンを押すと「ありがとう」と続けて言ってくれます。

果たして、動けない父にこの機械が使いこなせるだろうか？と思いながら父に見せました。
父も、私から話を聞いてから、『音声変換機』を待っていたようでした。
使い方を説明すると分かってくれましたが、版の上の５０音 を把握するのが難しいらしい

父の体の左側は完全に麻痺してしまっているので、左半側無視という症状があります。
見えてはいるのですが、視界のまん中あたりから左側が認識できません。

だから、５０音の文字盤も『あ行～さ行』辺りまでしか把握できていないようでした。
「あ、り、が、と、う」が打てません。『ら行』の「り」が見えないのです。
何度か試すうち、父は『音声変換機』を私の方へ押しやりました。
「もういい」という意思表示です。父の顔を見ると、とても疲れているのが分かりました。

「あー、だめかー、残念

　」　って心の中で思いました。

父の場合は２度の脳梗塞と、１度の脳出血で、脳細胞の多くが使えなくなっています。
何をしても、とても疲れるようです。窓の外を眺めていても疲れてしまいます。
情報量の調節ができないのと、情報を処理できかねるので、脳に大きく負担がかかり疲弊してしまうようです。特に新しいことを新たに憶えていくのは大変難しいと思われます。
体力も、気力も、目に見えて乏しくなってきましたし。

父に押し戻された『音声変換機』をやけに重く感じながら、私は心の中でガクッと肩を落としていました。
もちろん、顔はにこやかにほほ笑んだまま、でしたが…